「空室が増えてきた・修繕費がかさんできた・ローンの返済が重くなってきた」——どれか一つでも思い当たるなら、賃貸経営の見直しを考えるタイミングかもしれません。
賃貸経営の継続か売却かという判断は、正解が一つではないからこそ、多くのオーナー様が同じところで立ち止まります。あなただけが迷っているわけではありません。
賃貸物件は収益を生む資産である一方、市場環境や建物の状態によっては、保有していること自体がリスクになるケースもあります。
賃貸経営を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わっています。地域的差異はありますが、以前の「持ち続ければ安心」という常識が、必ずしも今の状況に当てはまらなくなっているのも事実です。
私・大澤は、東京港区赤坂の不動産会社SREM(スリム)で、長年のキャリアを活かし、賃貸管理から売買仲介まで幅広くオーナー様の資産課題に向き合ってきました。
この記事では、継続・売却を判断するための具体的な視点と、自分の状況に当てはめやすいケース例をもとに、判断のヒントをお伝えします。
「もっと早く相談していれば…」と後悔するオーナー様を一人でも減らしたい——その思いで、現場のリアルをもとに書きました。ぜひ最後まで読んでみてください!
もくじ
Toggle賃貸経営を続けるべき?売却すべき?5つの判断ポイント

賃貸経営の継続か売却かを判断するには、感覚ではなく、具体的なポイントを一つひとつ確認することが重要です。
「なんとなく不安だから売ろうかな」という気持ちだけで動くと、後から「もう少し続けていればよかった…」と後悔することもあります。逆に、判断を先延ばしにしすぎて売り時を逃すケースも少なくありません。
ここでは、5つの判断ポイントを解説します。あなたの物件と照らし合わせながら読んでみてください。
※なお、これらはあくまで判断の目安です。物件ごとの個別事情によって最適な選択は異なります。
判断ポイント1:空室率が10%を超えているかどうか
空室率は、賃貸経営の健全性を測る最もわかりやすい指標です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査(第28回日管協短観 ※2023年4月〜2024年3月)によると、年間入居率の全国平均は95.8%、つまり年間稼働ベースの空室率でいえば約5%前後が健全な目安とされています。
ここでいう “年間稼働ベースの空室率” とは、管理戸数全体に対して年間を通じて空いていた割合のことで、ある特定の日時点で計算する “時点ベース” とは異なります。
| 年間稼働ベースの空室率 | 状況 | 判断の方向性 |
|---|---|---|
| 5%未満 | 健全な水準 | 継続向き |
| 5〜10% | 要注意 | 改善策を検討する |
| 10%超 | 収益悪化の可能性大 | 売却も視野に入れる |
一時的な入退去の影響を受けにくい年間稼働ベースで継続的に確認することが、実態の把握に適しています。
空室率が10%を超える状態が続いているなら、エリアの人口減少や競合物件増加などの原因が絡んでいることが多く、自力での回復が難しいケースもあります。
まず、自身の物件の空室率がどの水準にあるかを把握することが、判断の出発点となります。
判断ポイント2:修繕費の負担が収入に対して重くなっていないか
修繕費は、築年数とともにじわじわと増えていく費用です。築10年を超えると外壁・屋根などの大規模修繕が必要になり始め、築20年以降はその頻度と金額がさらに増える傾向があります。
修繕費の積立目安は築年数と建築費に応じて異なりますが、家賃収入の10〜20%程度が修繕費として発生するケースも少なくありません。
「修繕すれば収益が戻るのか、それとも修繕してもジリ貧なのか」——この視点が、継続か売却かを分けるポイントの一つです。仮に下記の状態に当てはまるなら、経営継続のコストが見合わなくなっているサインです。
- 修繕費が年々増加し、手元に残るキャッシュが縮まっている
- 大規模修繕の費用を捻出する目途が立っていない
- 修繕しても競合物件に勝てず、空室改善が見込めない
一方、まだ築年数が比較的浅く修繕費が低水準で収まっているなら、しばらくはキャッシュフローを確保しやすい時期といえます。修繕費の推移をざっくりとでも把握しておくと、判断がぐっとしやすくなります。
判断ポイント3:ローンの金利上昇が収支を圧迫していないか
変動金利のローンで物件を保有するオーナー様にとって、金利上昇は今まさに直視すべきリスクです。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月・2025年1月と追加利上げを実施しました。
今後もさらなる利上げの可能性が指摘されており、変動金利型ローンを抱えるオーナー様は、現状の収支だけでなく “金利が上がったときの収支” まで想定しておくことが重要です。
| ローンの状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 変動金利ローンあり・収支が厳しい | 今後の金利上昇リスクを加味して売却を検討する |
| 固定金利ローンまたは返済完済 | 金利リスクは低い。継続を前向きに検討できる |
| キャッシュフローに十分な余裕あり | 多少の金利上昇にも耐えられる。継続向き |
たとえば、残債5,000万円のローンで0.5%の利上げが起きると、年間の利息負担は単純計算で約25万円増加します。
「現在の収支は黒字だから大丈夫」と思っていても、金利が想定以上に上がると一気に赤字転落するリスクも考えられます。今のうちに、金利が上昇した場合の複数の試算をしておくことをおすすめします。
判断ポイント4:築年数と建物の状態から今後の収益を見通せるか
建物の築年数は、今後の収益性を左右する大きな要因です。仮に、築30年を超えた物件では年間修繕費が増加し、収益を圧迫するケースも多く見られ、また、1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準の物件は、耐震性への懸念から入居者に敬遠されやすく、空室リスクが高くなりがちです。
| 築年数の目安 | 状況と判断の方向性 |
|---|---|
| 築10年未満 | 修繕費が低く収益性が高い時期。継続向き |
| 築10〜20年 | 大規模修繕の時期。費用対効果を精査する |
| 築20〜30年 | 修繕費増加と競争力低下が重なりやすい。売却の検討価値あり |
| 築30年超~ | 資産価値の下落が本格化しやすい。売却を本格的に検討する |
ただし、築年数はあくまで目安の一つです。費用対効果に見合ったリフォームやリノベーションによって競争力を回復できる物件や、立地条件に恵まれた物件では、上記の目安通りにならないこともあります。
判断ポイント5:立地の将来性と資産価値の見通しはどうか
建物の状態がよくても、エリアの人口減少が進めば賃貸需要が縮小し、家賃の下落や空室の長期化につながりやすくなります。
そうなると、どれだけ管理を丁寧にしても収益の回復は難しくなるため、立地の将来性は経営継続の可否を左右する重要な要素です。
一方、都市部や交通利便性の高いエリアでは、原則として今後も一定の入居需要が見込まれます。立地の将来性を判断する際は、以下の視点で確認してみましょう。
- 最寄り駅まで徒歩10分以内など、交通アクセスに優位性があるか
- 周辺の人口動向(増加・横ばい・減少)はどのような傾向にあるか
- 近隣地域に新築・築浅の競合物件が増え続けていないか
- 再開発計画やインフラ整備など、エリア価値を押し上げる動きがあるか
立地の将来性が高い物件は、売却する場合でも高値がつきやすく、継続する場合でも安定収益を見込みやすい二重のメリットがあります。逆に、需要の縮小が見込まれるエリアの物件は、今のうちに売却を決断することが、後悔しない選択になるケースも少なくありません。
当社SREMでは、東京23区をはじめ千葉・神奈川・埼玉の一部エリアにおける市場動向を日々把握しています。「自分の物件の立地が将来的にどうなるか…?」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。客観的なデータをもとに、一緒に判断材料を整理します。
以上、賃貸経営の継続か売却かを判断する5つのポイントを解説しました。一つひとつのポイントを単独で見るのではなく、複数を組み合わせて総合的に判断することが、納得のいく決断への近道です。
賃貸経営の継続 vs 売却を比較する収支シミュレーション

「自分の物件に当てはめると、実際どうなるのか」——そのイメージをつかんでもらうために、5つのケースを参考例に収支を比較します。
比較の複雑化を防ぐため主な情報に絞りつつ、継続・売却それぞれの判断がどのような特徴から導かれるのか、目安として確認していきましょう。
※以下の数値はシミュレーション例です。実際の判断は物件の個別事情によって異なるため、必ず専門家にご相談ください。
継続向き:安定収益が見込める3つのケース
【ケース1】都市部・築8年・空室率3%・固定金利ローンあり → 継続検討
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数 | 8年 |
| 年間稼働ベースの空室率 | 3% |
| ローン残高 | 2,500万円(固定金利) |
| 今後の修繕見込み | 5年以内は小規模修繕のみ |
| 年間キャッシュフロー | 約+60万円 |
築浅で修繕費が低く、固定金利のため金利上昇リスクも限定的です。このまま保有を続けることで、安定した収益を積み上げられる見通しが十分にあります。
【ケース2】駅近・築20年・空室率5%・リノベーション済み → 継続検討
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数 | 20年 |
| 年間稼働ベースの空室率 | 5% |
| ローン残高 | 1,000万円(変動金利) |
| 今後の修繕見込み | リノベーション済みのため当面は低コスト |
| 年間キャッシュフロー | 約+100万円 |
築20年でも駅近立地とリノベーション効果で入居率が安定しています。変動金利ローンの動向は引き続き注視が必要ですが、現状の収支に余裕があり、金利上昇をある程度吸収できる体力があります。立地の将来性も含めて継続が有利なケースです。
【ケース3】郊外・築15年・空室率7%・ローン完済済み → 継続検討
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数 | 15年 |
| 年間稼働ベースの空室率 | 7% |
| ローン残高 | なし(完済) |
| 今後の修繕見込み | 2〜3年以内に外壁塗装が必要(約200万円〜) |
| 年間キャッシュフロー | 約+120万円 |
空室率はやや高めですが、ローン完済によりキャッシュフローに大きな余裕があります。修繕費を差し引いても手残りは十分で、修繕後に入居率が改善する余地もあります。継続しながら修繕に投資する価値があるケースです。
売却向き:経営継続よりも売却が合理的な2つのケース
今の収支だけを見ると「まだ持てる」と感じるケースでも、今後の修繕費やエリアの需要動向を加味すると、経営継続のコストが見合わなくなる場合があります。下記の2ケースがその典型例です。
「まさに自分の状況だ」と感じる方は、早めにプロへ相談することをおすすめします。
【ケース4】郊外・築28年・空室率18%・大規模修繕が必要 → 売却検討
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数 | 28年 |
| 年間稼働ベースの空室率 | 18% |
| ローン残高 | 800万円(変動金利) |
| 今後の修繕見込み | 屋根・給排水管・外壁など(約500万円超) |
| 年間キャッシュフロー | 約-10万円 |
すでに収支が赤字で、500万円超の大規模修繕費も控えています。修繕しても空室率の改善が見込みにくいエリアであれば、修繕費を投じるよりも資産価値があるうちに売却するほうが、経済的なダメージを抑えられる場合が多いです。
【ケース5】地方・築35年・空室率25%・旧耐震基準 → 売却検討
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 築年数 | 48年(旧耐震基準) |
| 年間稼働ベースの空室率 | 25% |
| ローン残高 | なし(完済) |
| 今後の修繕見込み | 耐震補強を含む大規模修繕(数百万〜1,000万円超) |
| 年間キャッシュフロー | 約+30万円 |
表面上はわずかにプラスですが、耐震補強を含む修繕費を計上すると収支は大幅に悪化します。旧耐震基準の物件は入居者から敬遠されやすいうえ、買主がローンを組みにくい場合もあるなど売却時の障壁も重なり、今後の資産価値の下落が加速しやすい状況です。
ローン完済で動きやすいうちに売却を検討することが、資産を守る選択肢として現実的です。
「継続向き・売却向き」5つのケースを一覧で比較する
| ケース | 築年数 | 空室率 | 年間CF | 判断の方向性 |
|---|---|---|---|---|
| ①都市部・固定金利 | 8年 | 3% | 約+60万円 | 継続 |
| ②駅近・リノベ済み | 20年 | 5% | 約+100万円 | 継続 |
| ③郊外・ローン完済 | 15年 | 7% | 約+120万円 | 継続 |
| ④郊外・大規模修繕必要 | 28年 | 18% | 約-10万円 | 売却 |
| ⑤地方・旧耐震基準 | 48年 | 25% | 約+30万円 | 売却 |
キャッシュフローの数字が同じプラスでも、今後の修繕費・エリアの将来性・建物の状態によって、経営の見通しはまったく変わります。
当社SREMでは、オーナー様の物件データをもとにした収支シミュレーションを承っています。「自分のケースは継続・売却のどちらに近いのか?」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
※来社・オンライン対応可
以上、賃貸経営の継続・売却について、5つのケースで収支シミュレーションを比較しました。自分の物件の状況を数字で整理するだけで、判断軸は少しずつクリアになるはずです。
また、売却時期の基本的な考え方や、やってしまいがちなNG行動を事前に知っておくことで、より有利な判断につながります。売却を検討されている方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。
まとめ:続けるか売却か、プロに相談して判断材料を揃えよう

「売るべきか、続けるべきか」——その答えは、物件によって、タイミングによって、オーナー様一人ひとりの状況によって、まったく異なります。
迷ったまま時間だけが過ぎてしまっている方は、まず次の2つのアクションから動き始めてみてください。
- 経験豊富な不動産会社に査定を依頼して、今の売却価格を数字で把握する
- 税務面や今後の収支への影響を確認するために、不動産のプロや税理士へ早めに相談する
SREM大澤プロのアドバイス
オーナー様とお話ししていると、“数字より先に感情が動いている” と感じる場面が多くあります。「まだ手放したくない」「でも、このまま続けても不安」——これらの気持ちは当然です。
ただ、感情を優先するあまり判断を先送りにすると、修繕費がかさんだり、市場の売り時を逃したりと、気づいたときには選択肢が狭まっていることがあります。
私が常にお伝えしているのは、“決断の前に、正しく比較できる状態をつくること” です。
売却価格がわかれば、継続した場合の収益総額と並べられます。修繕費の見通しが立てば、5年後・10年後のキャッシュフローが見えてきます。その数字が揃ったとき、多くのオーナー様は「…あ、答えは出ていたんだ」と気づかれます。
この先の判断はまず数字を揃えてからです。まずはその一歩を、一緒に踏み出しましょう!
SREMの無料相談で、判断に必要な数字と視点を揃える
当社SREMでは、賃貸管理・売却購入仲介・賃貸仲介をワンストップでご提供しています。売却・継続どちらの立場にも偏らず、オーナー様にとって本当に有利な選択肢を共に考えられるのが、私たちの強みです。
“まだ迷っている段階” でのご相談も歓迎しています。また、無料相談は来社・オンラインどちらでも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
最後に、私・大澤は自身のYouTubeチャンネル『【大澤】この街が好きだ〜東京の不動産屋〜』で、東京の街を実際に歩きながら不動産会社の視点で街の魅力や歴史を発信しています。“データだけでは見えない街のリアルな空気感” をぜひ肌で感じてみてください。
エリアを知ることは、資産判断の精度を高めることに直結します。この機会にチャンネル登録していただけると嬉しいです!

